ニッポンたのしい。

楽しそうなことを求めて日々右往左往するさまを無様に綴ります。

ジャパンスネークセンターで蛇料理食べてきたヘビ。【後編】

~前回のあらすじ~

将来に対するただぼんやりとした不安に襲われた私と甘木は、珍しいものでも食べれば勢い人生観変わったりしないかなあ、などというザックリとした考えのもとヘビを食べにはるばる秘境の地・群馬までやってきた。
しかし甘木はすっかりヘビに意気消沈していた。私は発案者とあって責任を感じつつ、何としてでもヘビを食べ、その勢いで盛り上げて早くこの場を成功裏に立ち去ろうとやっきになって食堂へと向かったのであった。
 

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食堂がありました。ここが我々のそもそもの目的地。
中に入ると、中華料理っぽい服装の大将が、「いらっしゃい。好きなとこ座って」とカウンター席の内側から声を掛けてくれました。私たちの他にお客さんはいませんでした。
 
「俺らだけっすね」
「俺らだけだな」
「さて、ヘビ食うか」
「え?」
「いや、だから、ヘビ食べよう」
「あ、、、今日は、ヘビ食いにきたんしたっけ?」
「そだよ。だって昨日の話覚えてるだろ? 腹減って、なんか珍しいもん食べたいな、っていう、、、」
「、、、おれ、ヘビ一杯見すぎてなんだかよくわからなくなってましたけど、そっか、ヘビ、食うんすか、そっすね、そうでしたか、あれ、そうでしたっけ、あらら、食うんすか、そっすか、なる、ほど」
「落ち着け」
「はあ、、、ふう、、」
「てか、空いてるな。お店」
「、、、そっすね。そこがまた不安になるんスよね」
 
ヘビが食べれるヘビの研究所併設の食堂なんだから、全国津々浦々のヘビファンが脱兎のごとく押し寄せるのかしらなんて思っていましたがそんなことはありませんでした。メタギアのファンが何かの間違いでつい来てしまっている、なんてこともありません。
  
「センパイ、ど、どうしましょう」
「なにがだ」
「テーブル席にしますか、か、カウンターっすか」
 
ええい。
ままよ。
   
「甘木よ。カウンター、だ」
 
 言うやいなや、私は勢いカウンター席の座席を引いて、どっかと座り込みました。
 
(マジすか~)
 
消え入るような声で甘木が何か言っていました。
 
「どうした甘木、ビビってんのか」
「ビビってないと言ったら、ウソになります」
「俺もだ。まあ座れ」
「はあ」
 
甘木も座りました。
甘木め、やっと座ったか、とおもってほっと一息ついて目線を上げた目の前にいきなりハブ酒が置いてあり、具のハブさんと目が合い、ゾクゾクしました。
 

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「おぉ、、、」
 
と甘木が感嘆の声をあげました。
 
「これは、ハブ酒ですか」
 
と店長に聞いてみました。
 
「そうだよ。おれが漬けたんだ。美味いぞー。どんだけ飲んでも明日の朝にはシャキーって目が覚めんだ。ほら、メニューこれね」
 
といって店長はおもむろにメニュー表を渡してくれました。 
 
『唐揚げ定食』
『生姜焼き定食』
『ピラフ』
『山菜うどん』
 
どうやら普通のメニューもあるようでした。とはいえ、
 
マムシのから揚げ』
『シマヘビのネギ塩炒め』
マムシフルコース』
『シマヘビフルコース』
 
攻撃力高めのメニューに目が行きます。なんというインパクト。あくまでも着飾らないストロングスタイル。ここまできて、こうしてカウンターにまで座ってヘビメニューを頼まない道理はありましょうか。
 
 
わたし  「シマヘビのネギ塩炒め」
店長   「はいよ」
わたし  「2つ」
店長   「はいよ」
甘木   「えっ?」
 
甘木が目を見開いて私を見ましたが、私はあくまでも毅然と前を向き、店長の大きな背中をみつめました。店長の手前もあってか、甘木は声にこそ出しませんでしたが、カウンターの下で私の太ももをバシバシと叩きました。
店長は、一度奥に引っ込んでからまたすぐやってきて、
 
「そしたら、ほれ、これを、いまから捌いて炒めっから」
 
といって、細長い、灰色と茶色の間くらいの色をした、ヘビを持ってきてくれました。
 

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「持っていいよ」
 
ーーーガタタッ!(甘木が驚いてテーブルや椅子で足をぶつける音)
 

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「ほれ、はやく」 
「先輩、持ってください」
「う、うん」
 
甘木の目が、「おまえ注文したんやから責任とれや」と云いました。
 
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カウンター越しに差し出す店長の手に絡みつくシマ美(シマヘビなので)を、怖いので、下から手を回し、首の後ろをそっと握りました。
シマ美は、ヒヤッと冷たく、スベスベでした。しっかりとした弾力。真っ赤な舌をチロチロと出し入れしては動かして、こちらの様子をうかがっています。
しかしよく見ると、たしかに可愛くもありました。
 
 「、、、ふむ。慣れると、可愛いものかもしれないな。甘木、お前も、シマ美を持つか?」
「おれは、いったん、大丈夫っすね」
「まあ、そう言わずに」
「大丈夫っす」
「シマ美も甘木と遊びたいといっている」
「確実に言ってないっす。てか、『シマ美』って、この子の名前っすか?」
「可愛いだろう」
「そ、そっすね、、、」
「なら、ぜひ、持ってみたまえ」
「だ、大丈夫っす。てか、これ、毒はないんすか?」
「毒はねえよ。あったら渡さない」
と店長。
 
「なるほど、毒はないんすね。じゃあ、噛まれても大丈夫なんすね。ね、センパイ。咬まれても、ダイジョブらしいっすよ? センパイ、ゼッタイ、ゼッタイに咬まれちゃだめっスよ?」
「甘木、貴様、、、」
「さて、そろそろいいかな?」
 
店長が、救いの手を差し伸べてくれました。危うく意味もなくヘビ美にバイトされなくてはいけない流れでした。「さて、捌いてくっか」というと、店長はヘビを片手に奥の調理場へと向かいました。
 
「、、、甘木、きさま、ヘビ美との触れ合いを拒否した挙句なんだ最後のは」
「ウィットに富んだジョークっす」
 
といって甘木がニヤッと笑った時、
 
 
ーーードンッ!?
 
 
何かを鈍器のようなものを打ち付ける音がしました。 
ヘビ美が、まな板の上で、ゴッツイ釘で、脳天を撃ち抜かれた音でした。
 
ヘビ美は、食材になりました。

ヘビ美は、洗濯ばさみみたいなので吊るされて、食材になりました。

 

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「調理場の、タイルが赤いの、なんか怖いっすね」

「血で染まっているようだな」

「お肉を食べるって、こういうことなんすね」 

「はい、これ、心臓と生血だ。グッと飲みな」

 

いつのまにか店長が目の前に立っていて、手にしたグラスの中に赤黒いドロッとしたそれらが入っていました。

 

「先輩。飲みましょう」

「お、おれがか」

「そうっす」

「生血を白ワインで割ったやつだ」

「えぇー、、、」

「センパイ、やはく!」

「ほれ、はよ飲まん固まるぞ! ほれ!」

「はっ、はい!」

 

グッと、飲みました。

血と、ちょっとワインの香り。

何かあるな、とおもい噛んでみると、プチュッとした食感と、再びじんわりと広がる血のお味。とはいえ、美味しくないかと言われると、身体にいいのならまあ食べれなくはない。

 

「センパイ、どっすか?」

「まあ、いけなくはない、かな」

「マジすかー。ひきますわー」

「食ってる本人目の前にしてそれ言うなよ。ていうか、次はお前が食えよ」

「マジすかー、、、」

 

すると店長が今度はお皿を手にしてやってきて、

 

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「お待たせしました。シマヘビのネギ塩炒め」

「おぉ、これが、ネギ塩炒め」

「、、、若干、美味そうっすね」

「そうだな」

「これは余裕で食べれそうっすね」

「お前から食べたらいいんじゃないのか?」

「センパイが箸つけるまでは、おれ、食えないっすよ」

「いつからそんな体育会になったんだ」

「ごたくはいいから、食べばいいじゃないっすか」

(結局俺から食うのか、、、)

 

見た感じ、普通のネギ塩炒めには見えますが、あらためて私はヘビ肉をじっとみてみました。

 

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まあまあのヘビ感。

でも店長の手前もあるし、あったかいうちに食べた方が良いだろうというのもあって、お葱と一緒に、パクッ、と口の中へ放り込みました。かみました。モグモグ。

するとまあこれが、美味かった。歯ごたえコリコリ。

 

「うっ、ヘビ美っ美味っ、、、」

「マジすか」

「うん。美味しい」

「へー。じゃあ一口」

 

天木も食べました。

 

「あ、美味いっすね」

「だろ?」

「普通に美味いっす。店長、これ、美味いっすね」

「あったりめーだ。おれが作ってんだ」

「店長さすがっス!」

 

といって、やはりお腹が減っていたのでしょう。甘木は席を切ったようにヘビ塩炒めをパクパクと食べ始めました。

 

「なんだ、全然食うんじゃねえか。よし、じゃあ今日は特別に、マムシの踊り食いさせてやる。ちょーっとまってろ」

 

といって店長が奥に行ってプラスチックのタッパーごそごそやリ始めました。

 

「おい、甘木」

「なんすか」

「いまさっき、店長なんていった?」

「いや、なんか、マムシが、どうとか」

「やっぱ、そう言ってたよな。マムシって、毒あるよなな?」

「じゃないっすかね、、、センパイ、おれはネギ塩炒め担当なんで、まかせましたよ」

「待ていつからおまえそんな担当にーーー」

 

などと小競り合いをするうちに、店長は奥で小さなヘビを何匹か取り出し、真っ赤なタイルの調理場でトントンと何かを始め、おもむろに振り向いてこっちに来たかと思うと、

 

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「ほれ。マムシ踊り食いだ」

 

火を通していないマムシさん達は、頭をとられ皮を剥かれたままウネウネと動いていました。

 

「これ、このまま食うんすか、、、?」

「塩振って食べな」

「塩ですか?」

「おう。そのほうが美味いから」

「はい」

言われるがまま、お塩を振りました。

 

 

ーーービチビチビチビチビチッ!

 

 

器の中で、振られた塩の刺激で首のないマムシさんたちが一斉にのたうち回りました。

「ヒッ、ヒイッッ! 先輩、早く食べないと!」

「ちょっっ」

「早く食え! 死んじまったらおしまいだぞ!」

「はっ、はいっ!」

 

 

食べました。

 

 ーーーペチペチッ!

 

頬の内側でマムシがはねまわります。しかしいつまでも内側からペチペチビチビチやられている訳にもいかないので、思い切って、噛みました。

 

ーーーペチ、ペチッ!

ーーーペチッ! ペチッ!

 

(えいっ)

ーーーボリッ!

ーーーシーン。

 

 

マムシさんは、口中にて、お亡くなりになりました。

全く臭みはありませんでした。歯ごたえのあるしっかりとした食感。

 

「これ、そこまで、悪くはないですね」

「マジッスか」 

「ったりめーだ。ジョッキーとかスポーツ選手なんかわざわざこれ食べにここまで来るんだぜ」

「マジっスか! 店長すごいっス!」

(甘木よおまえは食べてないだろう、、、)

「これを食べたらもう、あとどんだけ飲んでも明日ズバッと起きれるぜ」

「すばらしい滋養強壮っスね!」

(だから、おまえは食べてないだろう、、、)

「兄ちゃんたち、なかなかいいな。今日は飲むか!」

 

そういって店長、そこにおいてあるハブ酒の瓶のふたを開けました。それから、下の方から別の瓶をまたとりだして、その中にはスズメバチがいっぱいに浸かっていました。

 

「ほれ、兄ちゃんたち、飲んでいいぞ。今日だけな」

「「あざーーす!」」

 

シマヘビと、マムシを肴に、ハブ酒スズメバチ酒の焼酎割りで酒席が始まりました。

悪酔いしない不思議なお酒でありました。

 

「センパイ! きょう、楽しいっすね!」

「楽しいな!」

 

結論、群馬は、どうやらとても楽しいところでありました。

 

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 ヘビ食べてきた。おしまいヘビ。