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ニッポンたのしい。

楽しそうなことを求めて日々右往左往するさまを無様に綴ります。

モノノフボーイの憂鬱② ~萩のrucoにて、雄町米の『福娘』飲みながら~

萩・広島の旅 旅行

「萩の月」って、仙台のお菓子なんですね。ずっと山口のものだとばかり思っていました。どんぐりです。

 

(前回:

モノノフボーイの憂鬱① ~萩をレンタサイクルで走りすぎてお腹すいた~

 

 

カラオケスナックっぽいお店で、60くらいのママさんを相手に350円の「海鮮丼」を食べています。

何故スナックに350円の海鮮丼があるのかわからないし、お酒飲まなくてもいい超良心的なシステムもわからないし、店の入り口に巨大なパンダのぬいぐるみが設置してある意味も分からないし、海鮮丼が不思議なほどに美味しいのもよくわからない。全部わからない。

分かるのは海鮮丼が美味しいということと、最高のエンターテイメントはアド街とタモリ倶楽部であることぐらいでしょう。キンキンがいなくても、私はアド街を観るのをやめません。

 

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「これ、350円でいいんスかね」

「まあ、メニューにそう書いてあるんだから、いんだろう」

「悪いから、ビール一杯頼もうか」

「そッスね。あ、モノ君は、ビール飲めるんだよね?」

「大丈夫です。成人式終えたとこなので」

「若いなー」

 

と私はうなりつつ、初めて目にするスプレータイプのお醤油さしを触って遊んでいました。絶妙なプッシュ部分の固さが玉に瑕でした。ママさん曰く、化粧品の入れ物か何かを生産している会社が、いかにもお醤油用らしい色合いとラベルにしてネット通販で販売しているとのことでした。恐ろしいアイデア力。私にも少し分けていただきたい。

 

 

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ほどほどに夕食を食べ、一人1000円しないという驚愕のお値段に驚きつつも、もう少しなにか食べれるものはないかなあと商店街をさまよっていた矢先、酒屋さんを見つけました。

 

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「いらっしゃい」

お店に入ると、40ぐらいの小柄の女将さんが前掛けをして店に出てきた。

「獺祭とかってあります?」

と、甘木。

「いえー、うち、その、造り酒屋なもので。だから、おいているのは『福娘』なんですよ」

「えっ、造り酒屋ですか!?」

「はい」

「センパイ、ツクリザカヤってなんすか?」

「単純にお酒を売る商店じゃなくて、お酒の製造者ってこと。醸造家ってこと。この裏で、つくってるんですか?」

「そうなんです。この商店街の裏は全部うちの酒蔵なんですよ」

「「「へえ~~!」」」

 

棚にいくつものお酒が並んでおり、奥をよく見るとすごい数の酒瓶が箱詰めをされて置かれていました。

 

「どれがオススメですか?」

 

と聞いてみて、幾つかのオススメを話してもらったらそれもこれもどれも飲みたくなってしまって逆に選べなくなってしまっていたところ、

 

「あ、これは雄町ですね。あ、これはまだ出荷前ですね

 

製造年月日を見ると、同月の日付が書かれていて、いつ瓶詰したのですかと聞いてみると、なんと一昨日だという。

 

「これにします。フレッシュなのが好きなので」

「若いし、生酒ですので、少し炭酸が入っていますのであんまり振らないで下さいね。開けたら大変なことになりますから」

「了解です!」

 

甘木が上を見た。

 

「あ、センパイ」

「なんだね」

「これ、なんすか?」

「これは杉玉と言うんですよ」

 

と女将さんが言った。

 

「何も知らんな、甘木。この杉玉こそが造り酒屋の目印なのだ。酒を造り始めると同時に緑の杉の葉でこのボールを作り、酒が完成するころにはほら、まさにこのように杉玉が茶色になるのだ。これが茶色くなったのが新酒のサインとなって、近所の酒飲みが酒を求めてやってくるのだよ」

 

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「”酒林”とも言いますね。本当は、軒につりたいんですけれど、商店街のことなので、仕方なく売り場の中に釣っちゃってるんですよね」

「風流っスね」

「初めて聞きました」

 

なんて、二人は歴史解説より全然興味深そうに私の話を聞いていました。行く先々で酒だけ飲んでいるほうが私の株は上がるのかしらん、と思いましたが、私はそこまでたくさんはお酒が飲めないのがつらいところでありました。

 

「では、こちらいただいていきますね」

「ありがとうございます。ホントに詰めたてなので、振らないでくださいねー」

「はーい」

「いい女将さんでしたね。本当にいま遠いところまで旅に来てるんだなあって感じがしました」

 

とモノノフボーイが言いました。

私はひどく晴れ晴れしい気持ちになりました。へとへとになるまで3人で萩じゅうを走り回っただけあって心地よい一体感があり、そこへお腹が膨らみ、いいお酒をやさしい女将さんの説明とともに購入し、それを今から飲むという、今日これから寝るまで楽しいことしかないだろうという幸福感が我々を満たしました。

 

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「うわあ、甘あい。おいしい」

「甘いな」

「でも美味いっす。いつもの日本酒の嫌な味がないっスね」

「その辺のチェーン店で飲むのと一緒にしてはいけないぞ、甘木よ。その上、これは雄町米。上手く仕込めばよくある山田錦より美味くなる。単に甘いだけではない。豊潤なのだ。これが雄町の味わいなのだよ」

「しかも少しシュワっとしてますね」

「酒が若い証拠だ。中でまだ酵母が発酵を進めている」

 

 

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「今日の城跡は、桜が綺麗でしたね、パイセン」

甘木が、頬を桜色に染めながらいいました。

「うむ。綺麗であったな。この時期はどこへ行っても綺麗だ。日本が一番美しい季節なのかもしれないね。そうだ、それに、明日は本番のライブだな! モノノフボーイ君」

「はい! 頑張ります!」

(ライブって、観る側はどうやって頑張るのだ?)

「見てください!」

といってモノ君はペンライトを取り出しました。

「なるほど、これを振り回すのか」

見た目は精悍で、見るからにリア充好青年なのに、筋金入りのモノノフ(ももいろクローバーZのファンは自らのことを『モノノフ』と呼ぶ)であることが垣間見れました。オタクとリア充の垣根が限りなくなくなっているのを身近に感じることができました。

 

「酒が美味いのは当然として、今日行った中でどこが良かったかね? モノ君」

「僕ですか? ぼくは東光寺ですね」

 

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「あ、あそこはちょっとすごかったっスね。最後くたくたになって行った丘の上の吉田松陰の生誕地の次に最後に行ったとこっスよね?」

「パンフレットを見ると『毛利氏廟所』というらしい。歴代毛利藩主の石碑と、500基の石灯籠がズラッと並ぶ様は、まさに聖域であったな」

 

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「甘木はどうだった」

「おれっすか? おれは、その石碑の亀っスね」

 

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「顔もかわいいし、お尻までちゃんと彫ってあったんす! 可愛くないっすか?」

 

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「お前、かわってんな」

「そっスか? なことないよね?」

と甘木はモノ君に聞きましたが、モノ君は何とも言えない絶妙な表情で難を逃れました。モノノフの高いコミュ力を垣間見れた瞬間でありました。今も昔も、武士は一筋縄では務まらないわけであります。

 

萩の夜は、地酒と、モモクロどんたくの曲名予想と、ライトの振り方、さびの振り付けの講習と共に深々と更けていきました。

 

 

 

 

 

「「「よっしゃ、ももクロ。 れに、夏菜子、杏果、詩織、あーりん。 行くぜ! ももいろクローバー!」」」

 

 

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【まとめ】 楽しく萩・広島観光してきた ~西新宿にて後日談~ 

 

 

 

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