ニッポンたのしい。

楽しそうなことを求めて日々右往左往するさまを無様に綴ります。

冴羽獠が好きすぎて、シティーハンターの二次小説書いてみた【前編】

 

が、一歩ずつ踏みしめるように階を上がってきた。ここは新宿ゴールデン街。女が一人で酒を飲みに来て不思議はない。

 

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「一人なんですが、、、」

どうぞ、こちらへ」

「ありがとう」

 

女は止まり木にを下ろし、何を話すわけでもなくバーの窓から外を見た。外は、絡まった電線と、向かいの店の締め切られた窓があるだけだ。バーはL字型に並べた止まり木が7席。相手の様子は手に取るように分かった。横顔が綺麗な女だ。梅雨の晴れ間の、ある暑い日の夜ことだった。

 

「、、、この辺りは、よく来られるんですか?」

「いえ、めてで、、、」

「なにか、お飲みになりますか?」

「はい、あの、、、『X.Y.Z』を、、、」

「はいはーい。少々お待ち下さい」

 

随分と、場違いなのが紛れ込んだように思え、あくびが出た。

 

『おい、

『なに?』

『ちょっと探り入れてくれ』

『あたしが? 素直に引き受けりゃいいじゃない。美人だし。あなた、好きでしょ、こういうタイプ。それに随分ツケもたまってる』

『下らない話は受けたくない。案件次第だな。一杯奢るからさ』

『あら、なら「白州」がいいわ』

『そんなのでいいのか。分かった』

『ただし、「25年」ね』

『えっ、んなもん、この店にあるのか?』

 

香は器用だ。香の長く伸ばされた前は、俯くことで目線を眩ませた。

 

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カクテルグラスに入れた氷をバースプーンでクルクルと回し、バカルディ・ラム、コアントロー、レモンジュースをメジャーカップで計り取り、シェイカーへ。それらを片手で、水が伝うような自然さでこなす一方、目空いた指先でスマホを撫で、一字一句違わずLINEで文字を送っていた。シェイカーに氷を一杯に詰め、小気味よく振り、氷を捨てたカクテルグラスに出来上がった『X.Y.Z』を注いだ。グラスを手での前に差し出すと、同時にもう一方の手にどこから取り出したのか白州25年のボトルをぶら下げていた。

「どうぞ、『X.Y.Z』です」

「ありがとう」

「きょうは、どうしてまた、ここに? 誰かのご紹介なんですか?」

 

そう言いながら香は、自分とオレの分のウイスキーをグラスにいでいた。いつもの通り、オレはロック、香はストレートだ。当然、両方オレ持ちだ。原価もバカにならない上、そこへいくら乗せるのかは今日の主である香次第。

 

「、、、ステキなお店だったので」

「このお店、二階でちょっと入りにくかったでしょ?」

「いえ、そんなことは。あの、入口に掲げているあのボードの絵、あなたが描いたんですか?」

 

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「ええ。かわいいでしょ?」

「ええ。とっても」

「うふふ。ありがとうございます」

そう言って、香はグラスを手にし、僅かに味を含んだ琥珀色の液体を口に含み、美味そうに下をなめた。これでいくらオレからボったくるつりなのか。しかし既にグラスに注がれてしまった今はもう手遅れだ。

オレは、半ばやけくそに白州を口に含んだ。薫りが、口中から鼻腔へと抜けた。悔しいが、少しいい気分になった。折角の美酒なので、本当ならばコヒーバでも燻らせながらやりたいところだ。

 

 

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「お味は、いかがでしょう?」

「ええ。美味しい」

「このカクテは、初めて?」

「ええ。、、、今日は、、、その、蒸しますね」

「梅雨入りもしましたしね。雨に降られると、客足が途絶えちゃって困るんですよね。でも今日は、いいお酒が出て儲かっちゃいました」

「あら、そうなんですか?」

「ええ。お蔭様で」

といって香はオレを見て口の端でニッとった。オレは何も言わず、ウイスキーをもう一口舐め、カランとグラスの氷が音を立てた。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

「浮かない顔をされてますが、何か、み事でもおありなんですか?」

「あの、実は、、、行方不明のを、探していまして」

そう言って、女は、一枚の写真を取り出した。

「あら、私はよくわからないけれど、人探しなら―――」

と言い、香は一口グラスを傾け、

「―――探偵さんにお願いすればいいんじゃないの?」

と少しそっけなく言い放った。

 

「お願いしているのですが、一向に、、、」

「なら、こんなところで探しても、結果は同じでしょ?」

「でっ、でもっ! このバーで、新宿のことならなんでも解決してくれる凄腕の方へ依頼ができるという話を聞いたんです! 今日は、藁にもすがる思いで来ました。もう、他に、頼るところはないんです、、、お願いします! もう、あなたの他に、頼れる人は、、、」

そういって女の涙がを伝った。

「おあいにく様。私を頼られてもね。私は、件のシティーハンターじゃないから。ただ取り次ぐだけ。それに、依頼を受けるかどうかは気分次第なの。そういう街よ。っこは」

依頼内容がくだらなさそうだったので、香は煙に巻こうとしている。このまま放っておいても良かったが、オレもまあ、暇だった。そして、なによりテーブルに置かれた写真の人物が気になった。

 

「で、しているのは、どんなお姉さんなのかな?」

オレは口を開いた。

「あら、リョウ、引き受けるの?」

「随分高い酒入れちゃったんだから、仕方ないじゃん」

「えっ、そ、それじゃあ、凄腕のスナイパーって、あなたなんですか!?」

 

『で、これ、いくらすんの?』

『シングルで、4万円』

 

「よ、ヨブホッ! ゴホッ、ゴッッフッ!」

慌てて蒸せた。

「ウッ、ゴホッ、、、。ソブだ、オレが、ウッ、人呼んでシティーハンター冴羽リョウだ。 、、、さて、態々こんなところまで来るとは、人探しのついでに消してほしい人でもいるのかな?」

「そっ! そんな物な話ではなくて、単純に、私の姉を、見つけてくれればそれでいいんです」

女は慌てた。オレだって負けじと慌てていた。なにせこれ一杯が4万円だ。

 

『おい!高えぞ!』

『どうして? 私は、白州世界で一番コスパのいいウイスキーだと思うわ』

コスパどうこうじゃねえ! 乗せすぎだ! 相場の3倍以上じゃねえか! 8万も払うのかよ!』

『違うわよ。私のはダブルだから、合わせて12万円♡

 

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額を、一筋の冷や汗が伝った。この契約、物にせざるを得ない。香に物を頼んだオレがバカだった。もはやこの女にこのまま帰られては困る。あと巨乳だから、ちょっと触ってみたい気持ちになってきたのも事実だった。

「単なる人探しとはいえ、お題は安くないぜ? 足りないようなら、身体を使ってでも支払ってもらうことになるけれど、構わない?」

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「ねえ」

「あーん?」

「なんでやる気になったの?」

「なにを」

「あの女の依頼」

香は酒が強い。香は、ダブルのウイスキーを簡単に飲み干し、カウンターに片肘をついていた。

 

「だってさあ、12万だぜ? 12万。歌舞伎町相場より高いじゃん。ちゃんと働かなきゃね」

「なーに言ってんの。そもそも払う気なんかないくせ」

「そうでもないさ。それに、ちょっと気になる」

オレは、女が置いていった、幼いころの姉の写真に再び見入った。横顔の写真で、さすがは姉妹だけあって二人とも美しい。しかし姉は、随分とボーイッシュな髪型をしており、左のの真ん中の辺りから耳たぶにかけて、刃物で切り裂かれたのか真っ直ぐ綺麗に裂けていた。

引っかかるものがあった。思い出すことができない。古い記憶なのかもしれない。しかし、オレの頭に咄嗟に浮かんだ既視感が、この街との関わりを訴えていた。

 

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「まあ、いいだろ。上手くいけば香にも12万が入るわけだし」

「それに、身体でもいいって言ってたものね? あんた、好きでしょ、巨乳

「やぶさかではない。うん。確かにあれは、柔らかそうだったなぁ」

ガタッ、とカウンターテーブルが10㎝ほど持ち上がった。香は、どこからともなく取り出した巨大な木製の大槌を両手で振り上げていた。

 

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続く。

 

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( ※画像は適当です)

(二次創作するに至ったことの経緯:

彼らの心の新宿に、シティーハンターはもういない - ニッポンたのしい。