ニッポンたのしい。

楽しそうなことを求めて日々右往左往するさまを無様に綴ります。

梅雨で憂鬱なので、寄席で林家さんに、紙切りしてもらった。【前編】

みなさんは、『紙切り』をしてもらったことはありますか?

 

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新宿の末広亭で林家正楽さんに、

大声で叫んだらその場でこんなのを切ってくれました。

 

 

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今週のお題「梅雨の風景」

 

梅雨。うっとおしいですね。憂鬱ですね。こんなときは、寄席で紙切りしてもらうに限ります。梅雨と言ったら、寄席で紙切りですね。そうですね。(強引)

 

後輩の甘木が、

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6月は、憂鬱ですね

とラインで話しかけてきました。

そうだな。梅雨だからね

5月も、相当憂鬱だったんですけど、比じゃないですね、、、

五月病より、梅雨のが辛いな

このままいくと、12月には、おれ、死んでるかもしれないス』

 

 

甘木はSEをしているのですが、振ってくる仕事の量がどんどん増えているようで、最近はやつれて貧相で、どことなく貧乏神よろしく縁起が悪そうでした。そして、じゃあどこか、縁起のいいところに一行こうじゃないかというお話になり、以前の記事 よろしく雨の降る中、新宿の末廣亭に行くことになりました。人間国宝でも見れば、なにか良い縁起もあるかもしれまあせん。

 

(その日のトリは小三治師匠でしたが、今回の主題は甘木がなぜか一番喰いついた紙切りについてですあしからず)

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

私と甘木は、桟敷席の前の方に腰を下ろしました。桟敷席は、遅く入っても案外あいているし、演者が非常に近く見ることができます。

 

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 ↑ 桟敷席

 

甘木は、落語を聞くのも初めてのようでした。何も知らないのに、一応誘われるままに参加するところが、甘木の偉いところだなあと思いました。私なら、興味もないのに「寄席でもいこうぜ」なんて言われても絶対についてはいかない。

 

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甘木は、入口で手渡された番組表を見ていました。

「センパイ」

「なんだね。甘木」

「『落語』とか、『漫才』とか、『曲芸』は分かるんすスけど、この、これ、なんすか」

「は? どれだね」

「この、、、」

 

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紙切りって、なんスか?」

「紙を切るんだな」

「はあ」

「それって、すごいんスか?」

「うむ。リクエストに合わせてその場で切ってくれるのだ」

「おぉ、それ、ちょっとすごいっすね。どんなの切ってくれるんすか?」

「そうだな、、、」

と私はスマホの中に入ってる、昔切ってもらった画像を探しました。

 

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お題『山登り』

 

 

「こんな感じに切ってくれる」

「おぉ! いいっすね! おれ、切ってほしいっス!」

なんだか甘木が食いついたので、今日はお客さんが多いけど、ちょっと頑張って切ってもらおうと思いました。しかし、前回切ってもらったときは、客席が空いていたのでリクエストも簡単でした。が、今回は演芸場がほぼ満席。そう簡単にはいきません。上手くいかなかったからカッコ悪いので、甘木に自分でやらせることにしました。

 「やるなら自分でやれ」

「どうやったらいいんすか?」

「うむ。基本的には大声で切ってほしいもの叫べばいいんだが、周りの客に、『おっ、アンちゃん、オツだねえ』と思わせるための作法もある」

 

①季節に合ったお題を決める

「『モモクロ』ってお題は、どースかね?」

「あれって、季節いつなんだ?」

「やっぱ、熱い方が盛り上がるんで、夏じゃないっすかね」

「じゃあ、だめじゃん」

「まず、季節感が大切だ」

「以前リクエストした『山登り』は、ちょうど去年の夏だった」

「なるほろ。じゃあ、6月だから、『紫陽花』とかっスかね」

「だな。他にも、『相合傘』とか、『カタツムリ』とか『梅雨』とかだな」

「けっこうテンプレっぽいんすね」

「ま、基本はそうだけど、ぶっちゃけなんでもいいんだよな。『ボブ・サップ』『分身の術』『憲法九条』『チョッパー(ワンピースの)』『国民年金』なんてのも切ってるの見たことがある」

 

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②タイミングよく、叫ぶ

「紙切りの師匠は舞台に出てきて、まず「鋏試し」でお決まりのお題を一つ切ってくれる。切ったものはそのまま前の方の席に配られる。ここでは手を上げたり『ハイ!』とか言ってもだめで、大体は図々しく一番先に立ち上がった人のものになる」

「図々しいっすね」

「寄席は弱肉強食の世界だ。いかに早く獲物にたどり着くがが勝負だ」

勝負は二枚目の紙切りだ。1つ目の紙切りを誰かお客さんが受け取ったら、

『おうちに帰ったら、黒い紙に貼り付けてくださいね。白い紙にはりつけたら、両方白くてなんだかわからなくなっちゃいます、、、』

といった後、

『ご注文をいただいて、切りましょう』

と言う」

「はあ」

「この、『ごちゅうもん』の、『』のところで、お題を叫べ

「『も』っスか?」

「うむ。『も』だ。それ以上早くても遅くてもいけない。ここを逃すとあとは空気を見ながら適当に叫ぶしかない。しかし今日などはお客が多いから、早めに手を打たないと、みながばんばん叫んで声が重なって乱戦になる」

「難しそうっすね、、、」

「甘木は初回なのだから、難しいこと考えずに『も』だけ狙えばいい。あとは声の大きいものの勝ちなのでそれを大声で言えばあとは何とかなる」

「も、ッスか」

「そうだ。モ、だ」

「も、もも、ももも、、、、」

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③無事に切ってもらえたら、紙切りをもらいに行く

「見事切ってもらえたら、切ってくれている間すごくうれしくなるぞ」

「マジすか」

「うむ。すごく誇らしい気持ちになる」

「しかしササッと取りにいかないと、後がつっかえるとので、切っているときの音楽が鳴り終わるとともに席を立ち、客席から見えない程度の舞台の脇にそっと立っておくといい。なお、ここでご祝儀をポチ袋であげる常連もいるが、我々若人はそんなこと気にしなくてもいい」

「、、、やること多いっすね」

「まあ、結局は横でおれが差配するから大丈夫だ」

 

④頼んではいけないもの

「ちなみに、タブーなお題ってあるんですか?」

「あまり政治思想的なこととか、批判的なお題は基本的に辞めた方が良い。あとは、『豆腐』ってのがヤバいと聞いたことがある」

「どういうことっスか?」

「うむ、、、」

 

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「紙をそのまま渡されて、『ごし豆腐』です。言われることがあるらしい」

「まじすか、、、」

「ああ。ちなみに、もう一枚差し出されて、『こちらは、木綿豆腐』と合わせ技でこられることもあるらしい」

「恐怖っすね。そのままの紙を受け取りに行くオレが地獄っすね」

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演者は、入れ替わり立ち代わり。面白い落語や、面白くない落語が次々と繰り出された。漫才や、曲芸もあった。そうこうするうちに、問題の紙切り、林家正楽師匠の出番が刻一刻と近づいてきていた。

 

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後半へ続く。

 

◆ ◆ 後編 ◆ ◆