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ニッポンたのしい。

楽しそうなことを求めて日々右往左往するさまを無様に綴ります。

世界遺産見に行ったら、中二病をこじらせた中学生が補導されてた件【小笠原滞在記その①】

旅行 小笠原滞在記

今回から、リクエストをいただいた小笠原滞在記を4回前後にわたりお送りしたいと思います。父島で、ウミガメを食べたり、島の怪談を聞いたり、イルカと泳いだり、海の中でクジラの鳴き声を聞いたりします。

しかし、絶海の孤島にして世界自然遺産の小笠原、そうやすやすとは上陸はさせてくれません。交通手段は船か、非常時の航空自衛隊のヘリによる空輸の二択しかありません。当然船で行くことになりまして、今回はそんな行きの船中でのこと。

 

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家出少年家出青年旅先で出会うことは多々あります。そうして出会ってきた中で、最も中二病全開の、将来有望な少年に出会ったのが、世界遺産小笠原諸島父島へ向かう、おがさわら丸の船中でのことでした。

 

 

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小笠原は、基本、どこもかしこもこんな海です。綺麗。

沖縄と違ってあんまり人はいない。

 

さて、小笠原へ行こうと思ったのはテレビで、N○Kでダイオウイカを見たからでした。

 

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なんでも深海に住む巨大なイカを生きたまま撮影することに世界で初めて成功したという。で、それを見まして、えらく、感動してしまいまして、こんなすごいものどこの海にいるんだろうか、と、調べてみると、なんと、これが日本らしいのです。

場所は世界自然遺産小笠原諸島父島のすぐ裏の海溝なのだそうでした。すごいですね。そんな大自然があるんだなあ、行ってみたいなあ。

 

行ってみました。

 

 

 

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竹芝ふ頭から船に乗ります。船の名前は、そのものズバリ、『おがさわら丸』こと、通称・おが丸

 

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ところがこのおが丸、人に聞いてみると、トラウマを持つ方は少なくないようです。理由は、単純。船酔い、であります。

 

おが丸の何がすごいって、外洋航海は、ものすごく揺れます。ものすごく。宮島フェリーや尾道のフェリーとはわけが違います。それがですね、どのぐらい続くと思います? 片道25時間半

 

 

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内海は揺れないんです。でも外洋に出た途端、船全体がグッラグッラと絶妙な塩梅で揺れるんですね。なかなかのものでした。船酔いにはかなり強い私ではありますが、初めての貴重な船酔い体験をすることもできました。

 

そこで、気分転換に外に出ますと、 

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なんっっっっっっにもありません。

ずーーーーーーーーっっっとこの景色。

八丈島などに寄港する際以外、この風景が約20時間以上、延々と続きます。

ときおり船に驚いたトビウオが水面をはねているぐらいでしょうか。

 

 

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あんまりやることがないと人間、人と話したくなるもので、多くの人が廊下に出てはうろうろしたり、同船している見ず知らずの人と会話を始めたりしてしまうものでした。

 

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船内の階段の脇にいくつか椅子があります。私はそこに腰かけて、絲山明子の『ダーティーワーク』を読んでいました。向かいの席には、私と同年代ぐらいの女性が座っていました。

 

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仮に名前を、

長澤まさみとします。

 

その長澤まさみの隣の席にいたおっさんが席を立ち、入れ替わりに、一人の青年が腰かけました。

 

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なんかこんな感じの青年。

見ると靴がダサい。中学生ぐらいかもしれません。

まさみさんは本を読んでいます。

青年は、手持無沙汰でした。足を少しだけパタパタさせたり、手をもじもじとさせたりしている。

 

 

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「あ、あのっ、お姉さん」

青年が緊張気味に話し掛けました。

偉い。ナンパではないか。何たる勇気。男子高出身者である私にしてみれば、中学生にしてナンパなど空前絶後の絶技であります。

 

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「はい? あら、どうしたの?」

まさみさんは彼が中学生ぐらいであることに気づいたようでした。

「あのっ、な、何を、読んでるんですか?」

「これ? これは、吉本ばななさんの『アムリタ』よ」

「小説を読むんですね。頭いいんですね」

「あっははは、そんなことないわ。小説ぐらいみんな読むわ。君は小説は読まないの?」

「おれぇ、こう見えてぇ、本とか読んだことないっす」

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(自分がどう見えてると思っているのか。まず読書家には見えぬ。そして気になって私の読書が進まぬ!)

 

 

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「へぇ、そうなんだ」

「はい。おれ、親にも、先生にも、読めっていわれても、一回も読もうとしたこと、ないっす」

 「あら、読んでみたら楽しいんだけどね」

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「でも、おれ、読んでもすぐ、飽きちゃうんす」

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(一回読もうとしてるじゃん! 挫折してんじゃん!)

 

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「きみは、家族旅行?」

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「いえ、おれ、一人できていますっ」

「あら、凄いわね。おばあちゃんの家とかがあるのかな?」

「おれ、家出してきてるんす!」

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(家出少年来たー! しかも自己申告しちゃったー。しかもちょっと、というか、結構誇らしげ)

 

 

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「あら、じゃあお母さんは心配ね」

「いえ、そんなことないっす。ぜったい、心配なんかしてないっす」

(なんでお前が分かるんだ?)

「てゆうか、親とか、マジでうざくて、作るメシとか不味いし、成績とかも、自分だってバカなのにいつも、すげえ文句言ってくるし、なのに、とつぜん、心配してくるとかぁ、ほんとウザいっす」

「そうなんだー。でも私もそんなこと思ってた時期はあったな。いまは仲良しだけど」

「おれは、そんな親と仲がいいとか、ぜったいないっす。おれのは、お姉さんの、そういうのとは、また違うんで」

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(眩しい。眩しいまでに、思春期)

 

「君は、なんで、小笠原に行こうと思ったの?」

「おれ、とくに下調べとか、全然してないんですけど、兄が、母島に住んでるんです」

(兄が母島にいる時点で、結構情報持ってるだろお前)

「そうなんだ。全部一人で決めちゃうんだね。すごいねー」

「おれ、大体いつも、こんな感じなんで。いつもそうっすけど、おれは余裕っす。ぜんぜん気にならないっす。実は、宿もとってないんですけど、なんとかなるかなーと思ってて」

(清々しいまでに中二感全開だな。思春期全力疾走だ)

「野宿とかも余裕です」

「そうなんだ! すごいね! やったことあるの?」

「ないです」

(ないんかい)

 

 

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「お姉さん、キレイですね」

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(おおっ!?)

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「あら、アハハハ、ありがとう」

「お姉さんは、彼氏とかいるんですか?」

「アハハ、どう思う?」

「キレイだから、多分いると思います」

「かもねー? アハハ。きみは、彼女いるの?」

「オレは、同級生の奴らとか、幼いっていうか、なんか、好きになったことなんかねーし、っていう感じです」

「へーそうなんだー。でも女の子って、柔らかくって、いい香りがするのよー? 本当に好きな子いないのー?」

(わお。まさみ姉さん攻めるねぇ)

「いや、オレ、そういうの、よくわかんないんで」

「そっかー、そうだよね。じゃあ楽しみだね、これから。あ、小笠原ではなにするの?」

「おれ、別に、ナニするかとかって特になくって、海とかも、そんな興味ないし。なにか、仕事をして、しばらく暮らすんです。帰らないんです」

「へー、そうなんだー、私はダイビングとトレッキングするんだー。イルカと泳ぐの。イルカと泳げるのって、ステキよね?」

「そうなんですか」

「きみも、イルカと泳いでみたくない?」

「……ちょっと泳いでみたい、かも、しれないです」

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(うんうん。偉いぞ、青年。女性の言うことに逆らっちゃあいけないよ。こうして人は学んでいくんだな。うんうん。)

 

「島で、いいことがあるといいね!」

「そうっすね。ちょっと、楽しみになってきたかも、しれないです」

(ええ話やないか)

 

 

そのときでした。

私の隣に並んで座って話を聞いていたババアが、「マアッ怖い! 家出少年よ! 社会の闇よ! 」みたいなツラをして席を立ち、近くにいた旦那らしきおじいさんと、こちらをチラッチラ見ながらひそひそ話を始めました。こりゃ、通報されますね。

私は思いました。

少年が、しばらくは上手く逃げおおせるといいな、と。

 

 

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翌日がっつり補導されてました。

翌日彼は警官と並んで海を眺めていました。

次のおが丸の辺土への出向は1週間後なので、まあ、警官も、確保したところで次の就航までは海でも見せてるしかなかったのかもしれません。宿無しの彼は派出所にでも泊まるのでしょうか。それはそれで貴重な経験かもしれません。

彼はきっと、夏休み明けにちょっとした英雄になるでしょう。「あいつ、家出して小笠原まで行ったらしいぜ」「え、まじで、すごっ」「捕まって、警察に5泊したらしいぜ」「マジで!ヤバい!」みたいな感じに。そしてさらに斜に構え、「おれは、別に、特に考えてそういうことしたとかじゃなくて、逆に、考えもせずに、気づいたら、船に乗ってたっていうか。警察とか? 全然余裕だし?」的なことを言うのでしょう。

そして、そんないろんな人々の思いやらなんやらを乗せ、今日もおが丸は太平洋をユラユラと渡っているのでしょう。

 

 

次回、私は小笠原は父島に無事上陸し、さっそくウミガメ食べます。

請うご期待。

 

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誰に求められるでもない物語は続く。。。

 

◆ ◆ 小笠原滞在記続き ◆ ◆

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