ニッポンたのしい。

楽しそうなことを求めて日々右往左往するさまを無様に綴ります。

シティーハンターが好きすぎて、冴羽獠を2015年版にしてみた【中編】

<前回の話>

 

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一人の女が、ゴールデン街のリョウの元を訪ねた。姉を探してほしいと言う。ただの人探しとあって面倒だと最初こそ思ったが、リョウには写真の横顔に見覚えがありその依頼を引き受けることにした。

 

冴羽獠が好きすぎて、シティーハンターの二次小説書いてみた【前編】

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

 

 

「この写真、見覚えないか?」

「えー? なにそれー? 知らなーい。ねーリョウちゃーん、そんなことよりー、もっと飲んでってよー」 

サチ子は美形だ。サチ子に飲んでと言われて断れるヤツは多くないだろう。しかしいまオレはあくまでも仕事中だった。

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「もう十分飲んだって。とりあえず何も思い出すようなことはない?」

「なーいー」

サチ子の下唇と右頬、そして右の目尻にはピアスが通っている。オレはオシャレだと思う。サチ子は近いうちにスプリットタンにしたいといっている。

「そうか。ありがとう。お代、ここ置いてくから、またな」

「ちょーっとー! リョウちゃん! 1枚足りないよ!」

「今度来たときな!」

「ちょっと、リョウちゃんったら! もう!」

 

オレは二階にあるバーの階段を降り、改めて手元の写真を眺めた。縦に大きくザックリと裂けている耳に、やはり目が行く。写真は映りが悪く、耳にピントが合っていて、顔の細かい表情まではわからない。他に写真はないという。ボーイッシュな髪形をしている。

 

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お互い孤児で、幼くして別の家庭に引き取られた。二人が別々の家族に引き取られた直後、養護施設は経営破綻した。大人になってから調べたところによると、経営者が金を持ち逃げしたらしかった。その他、一切の情報は出てこなかった。そうしてほとほと困り果て、オレのところまで辿り着いてしまったという話だ。

 

オレは、写真に既視感を感じた。オレは自分の勘を信じた。しかしあれから1週間が経ったが、有力な証言は出てこなかった。

 

「リョウちゃん! 飲んできなよ!」

 

オレが階段から降りるや、声がした。優子姉さんだ。

「優子さん、ただ飲んでるんじゃないんですよ。聞き込み聞き込み」

「ホントにー? 仕事? ほんとはサッちゃんと話したかっただけなんでしょ?」

「違うってー。じゃあ、ちょっと飲んでこっかな」

「ワーイ♪ 今日ちょうど暇なのよ。いらっしゃいな♡」

「ビールで」

「コロナでいい?」

「ありがとう」

「なにそれ、写真?」

「そう。これが依頼者の尋ね人」

「ふーん」

「この耳に、見覚えはない?」

「耳?」

「ああ」

そう言ってオレは優子さんに写真を見せた。

 

優子さんは、オレが、この街に愛着を持つキッカケを作ってくれた人だった。あれは確か、優子さんとの出会いは5年程前のことだった。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「Gimme fuc〇in' beer Bitch!」

―――ガシャーン!

 

グラスが割れる音がした。
「出てって!」
「Shut the fuc〇 up fuc〇in' Bitch!」
「イヤッ! ちょ、ちょっと!」

 

―――パリーン!


騒々しい。土曜日の朝の5時。いや、ゴールデン街では金曜の深夜5時と表現した方が自然かもしれない。

 

「やめてください! イヤッ! 痛っ!」

あーあ。外人が暴れてら。

たまにあるな。こういうの。どーしよーかな。めんどうだけど。

そのときオレは、ただこの街で日銭を稼いでフラついてしているだけだった。失うもの、守るもの、怖いもの、もちろん、愛するものもなにもない。

本当にどっちでもよかった。店の前を通ると、店中で黒髪のロングヘアーのお姉さんが大柄な外人んい髪を引っ張られ、テーブルに頭を押さえつけられていた。あ、お姉さんと目が合った。見覚えがあった。

 

「あっ」

 

ここ、一軒目に飲んだ店だ。たしか、ちょっと暗いけど悪くない体つきした若い美人の姉さんだった。あーあ、折角のロングヘアーが引っ張りまわされて台無しだ。

しかたないなあ。けれど、めんどくさい。

めんどくさい。

めんどくさい、めんどくさい。

めんどくさいめんどくさいめんどくさいめんどくさいめんどくさ

と心の中で猛烈な早口を唱えつつ開けっ放しになっているドアの中へ入り、手を伸ばして筋骨隆々の外人の肩に手を掛けた。グッと引っ張ったがビクともしなかった。いい体だ。ただの観光客じゃ、ないなこりゃ。在日米軍か。ま、どっちでもいいけど。

 

「Hey bro?  This bar will be close soon. you looks like so fucked by drink, Let's get out here and drink some water over there―――」

―――バチンッ!

 

その外人は、何も言わず肩に置いたオレの手を空いた手で勢いよく叩き落とした。

叩かれたオレの手は勢いよくグルリと身体の後ろ側まで吹っ飛ばされ、軽い逆関節技のような痛みが肘と肩に走った。

オレはムカついた。

後ろ手になった手を尻ポケットに突っ込みハンカチを取り出し、それを後ろからソイツの首に巻き付けグッと締め上げ、そのままグルリと背を向け、男の首を引っかけたハンカチを背負うようにして店の外に向かった歩いた。

「ちょっとこっち来ようねー」

「§?√♯!!?◆Ω仝ーー!!?」

首を絞まり息が止まった男は、のけ反り、両手をバタつかせ、椅子を蹴飛ばしながら意味不明な言葉を締まったノドから吐き出しながらズルズルと外に出た。

 

「アアッアァァッ!!」

店から出したところでその外人の男は何かを叫びながら首に掛かったハンカチを引きちぎった。

「あ、おれのハンカチ」

と思ったのもつかの間、殴りかかってきたのでステップバックしてかわし、そのまま受け身を取りつつ一本奥の通りまで走って逃げた。

一旦店から離れようと思った。当然、すぐに追いかけてきたので、クルリと向き直り、また殴ってきたのでギリギリで避けつつ、殴ろうとした男の腕に両手を絡ませ一気に体重を預け、肘を極め、肩関節を外そうとした。

男は「アウッ!」とかなんとか言って一瞬痛そうにしたが、持ち前の筋肉で完全に極まった腕ごと持ち上げ、腕にしがみつくオレを振り落した。オレはなんとか受け身を取るも、投げられた勢いでゴロゴロと少し離れたところまで転がった。地面で腕をすりむきながら片膝立ちになって顔を上げると、男が飛びかかるような勢いで迫っていた。オレは飛び跳ねるようにして立ち上がり、そのまま顔を若干前に突き出しパンチを誘った。

相手は酔っ払い。当然、思いきり顔を殴ってきた。

オレはすんでのところでしゃがみ、半身になって随分とガニ股な作りになっている脚の間に腕と身体を差し込んで右腕で男の下半身を跳ね上げつつ、左腕で男の頭をつかんで引き下ろすようにして、男を、襲ってきた勢いそのまま放り投げた。男はオレの頭上、宙に浮き、前周りにクルリと1回転ながら地面顔面をぶつけてもなお自らの肉体の重みの勢いを持て余しゴロゴロと転がり、ガードレールに背中をしたたかに打ち付け、動かなくなった。普通なら重症だろうが、まあコイツなら大丈夫だろうとオレは思った。

オレは伸びた外人の顔写真をスマホで撮り、飲み仲間の横須賀の将校にLINEで画像を送り、このままここに置いておくのもなんなので、表通りまで引きずり出して、風鈴会館前に大の字で寝かせておいた。
しばらくしたら、怖いお兄さんか警察の方がなんとかしてくれるだろう。米兵ならばそんな酷いことにはならないはずだ。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

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「お姉さん、マキロンある?」

オレは店に戻った。

「た、助かりました、、、あ、ありがとう、ございます」

店のお姉さん急いで上の方の棚からマキロンを探してくれた。

「どういたしまして」

「お姉さんは、ケガは大丈夫?」

「ええ、私は、その、大丈夫です。すみません、巻き込んでしまって」

「いいっていいって。全然大丈夫」

「あの、これ、マキロンありました」

「お、ありがとう」

と言ってそのお姉さんがマキロンを渡してくれるとき、オレは役得とばかりに髪を触った。

「髪は、大丈夫?」

彼女の髪は絹のようにやかで、こしがあり、一瞬、く香った。

「ええ。私、髪は丈夫なんです。あの、本当に、ありがとう、ございます、、、」

お姉さんは、ありがとう、と言った割には嬉しそうな顔はしていなかった。

お姉さんが視線をカウンターの中に向けた。驚いた。覗き込むと、お姉さんお足元、カウンターの中に小さな金髪の男の子が立っていて、お姉さん手をぎゅっと握りしめていた。殴られたのだろうか、顔には青痣があった。

「あれ、こんな子いたっけ? お姉さんの子?」

オレは渡してもらったマキロンをティッシュに含ませ、イテテ、イテテ、と言いながら傷口にチョンチョンとつけた。

「いえ、さっきの外人が連れていたんですが、いつの間にかカウンターの中にいて、私

の手を握って動かなくって」

 「ふーん」

男の子は、死んだような、ドロリとした眼でオレを見た。その目に意志はなく、ただボンヤリと、立っていた。 

 

 

続く。

 

 

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